あれ、いつもはカメラ目線なのに・・・

ささ、すこし遅れてましたけど、楽しかった北大ウィキペディアタウン、2日目はオープンストリートマップワークショップでした。
僕は2日目出席できなかったのですが、今回一緒に運営を行なっていた丸田さんが2日目のレポートを寄稿してくれました。

オープンデータ初めてレポート

ウィキペディア日本語版管理人日下さんが、知の共有財産を作るわくわくの扉を開けてくれた1日目。

続く、2日目は、OpenStreetMapFoundation Japan / mierune.incの古川泰人さんを講師に迎え、地図のウィキペディアと言われるOpenStreetMap(以下OSM)のレクチャーと実践ワークショップを行いました。

ウィキペディアが「それ」が「どのようなもの」であるかを伝えるメディアであるのに対し、OSMは、「それ」が「どこに存在しているのか」を示すメディア。

ウィキペディアと同じく、誰もが自由に情報を書きこんだり、修正することで、常時更新されつづけていく地図です。

古川さんは、「ウィキペディアとOSMは相思相愛の関係。お互いを補完し合える最良のパートナーだと思っている」と言っていました。

OSMの登録アカウントユーザーは、世界で、434万人(2017.11月現在)。通称マッパーと呼ばれます。日本では一日約100人のユーザーが2万~4万個のデータ書きこみを行っているそう。詳しい状況は、OSMstatsというサイトで見ることができます。

あの有名企業も使っている

一定のルールを守ったうえで、だれもが無償で利用できるオープンデータの利点を生かし、フェイスブック、ナイキのランニングアプリ、オフライン地図Maps.meなど、事業にOSMを利用する大手企業が多数いるそうです。また、OSMをベースとしたICTサービスや地図サービスもたくさん生まれているそう。いろいろな事例を紹介いただいたのですが、ここでは特に記憶に残った事例を選んで取り上げてみます。

F4map 

ヨーロッパとアジアのゲーム会社グループF4がOSMをベースに立ち上げた、3DのマップサービスF4map。夜の場所が暗くなったり、時間に合わせた影ができたり、雨が降っていたりと、再現性が半端なくて見てて飽きません。使われている3Dや色のデータは、OSM上でマッパー達がが3Dタグを駆使してコツコツ作り上げたもの。こういった作りこみが産むわくわく感、遊び心が、多くのユーザーを引き付け、楽しみながらより深くデータベースを作りこんでいくのでしょう。

その結果、世界中の人々が、更新が早く詳細な地図サービスを利用することができるという好循環は、オープンデータとして広く開放されたコモンズ(共有財産)だからこそ生まれるものなのだと感じました。

このサービスでは、お台場にあるガンダムが面白かったです。あと、古川さんのお勧めはおしゃれなparis。北海道では、酪農学園大学構内が古川さん育成の学生マッパー達によって詳細に書きこまれています。

データベースとしてのOSM

OSMは地図としてだけでなく、データベースとしても、ポテンシャルの高いサービスだそうです。地図上に表示されるものには、様々な情報をタグとして追加することができます。このタグを解析することで、様々な情報を可視化することができます。

例えば、toilets:paper_supplied=yes/no はそのトイレで紙が使えるかどうか、

toilets:wheelchair=yes/no/limited というタグでは、そのトイレで車いすが使えるかどうかを示します。

これらのタグの分布を広域の地図で表示すれば、世界で紙の使えるトイレの分布や車いす対応トイレの分布がわかり、文化・インフラの状況や、バリアフリー化の地域差を可視化することができます。

古川さんが関わったサービスには、車いすの使える施設を抽出した地図Wheelmapというサイトもあります。

ICTプラットフォームとしてのOSM

「ひぐまっぷ」は、ヒグマ出没に関する情報整理作業の効率化を目的とした、行政担当者向けのシステムで古川さんらが開発に関わっています。

従来、現地調査に行き、庁舎に戻ってから紙ベースでの報告書作業をするなど、多大な労力がかかっていたヒグマ出没対応業務ですが、OSMベースのwebアプリで、現地から素早く情報更新ができるようになりました。ICTによる生産性向上って、何をするのかわからなかったけど、「こんな風に活用できるのね」というなるほど感が高かった事例です。

OSMでストリートビュー 

OSMをベースとして、某大手マップのサービスのようなストリートビューのサービスもあります。

某大手地図サービスが専用車でストリートビューを撮影しているのはあまりに有名ですが、Mapillaryはなんと、マッパーが歩きながらスマホで連写するシステム。おどろきの歩兵戦術。だからこそでしょうか。データが充実している場所を眺めるとその労力に感動さえ覚えます。

実は小さな労力を積み重ねる仕組み、つまり、多くのユーザーが主役になれる仕組みというのが、こういったオープンソースコミュニティー育成にはとても大事なようです。OSMを事業に利用している企業の中には、大規模なデータインポートを行い地図の完成度を一気に高めたいと思う人々もいるそうです。しかし、OSMでは、地域のコミュニティーによる継続的な貢献を尊重し、大規模なデータインポートについては、慎重に手続きを取ることを推奨しています。

オープンデータとライセンス

OSMなどのオープンデータ上に行われている自由で多様な使い方には情報の権利の整理がとても重要ということも学びました。

データの著作権を持つ人が、どのようなルールでその権利を開放するかを、明確に示すことで、データの幅広い利活用を促すことができます。権利がわからないデータや、権利のことを知らずにデータを使って、後々トラブルになることは近年多々ある話のようです。権利を守るにせよ、オープンにするにせよ、それを明記するという常識がより広がることが大事なのだと感じました。制作物の権利管理で最近よく聞くクリエイティブ・コモンズ・ライセンスについてや、民間地図サービスの使用規約については、いろいろご説明いただいたのですが、詳しく書けるほど理解ができていないので割愛します。

OSMをのぞいてみよう

もちろん、本家、OSM上でのマッパーの活躍もご紹介いただきました。

東京ディスニーランドは、新しいアトラクションができると即座に建物が更新されることで有名なそうです。 ビッグサンダーマウンテンのアトラクションの軌跡は、何度も乗車して、GPSで計測して取り込んで作成している人がいたとのこと。駐車場には、駐車番号まで書いてあり、マッパーのディスニー愛が、多くの人に利便性を届けた例だなと思いました。

実際に地図をカキカキしてみた。

2時間越えの充実したレクチャーの内容はまだまだ書ききれてないのですが、最後の1時間弱でOSMを実際に書いてみました。

アカウントを登録した後、OSM上に用意されているチュートリアルで基本的操作を学習。このチュートリアルがとても丁寧にできていてわかりやすい。OSMを支えているマッパーを迎え入れるために、チュートリアルのホスピタリティーには力が入ってるように感じました。

チュートリアルが終わっての課題は、「自分の出身学校を書いてみよう。」

札幌などの大都市は、びっちりと建物、道路が書きこまれているOSMですが、少し地方に行くと地図はスカスカ。私の出身小学校も手つかずのまま残っておりました。(なんと、近くの大学も手つかず。)

情報の地域格差については古川さんも言及していて、OSMのみならず、某民間大手地図サービスなども田舎は地図が充実していないことが多いそうです。利用者が少ない地域は、作図の労力をかけても採算が合わないため後回しにされることが多いからだそう。でも、少なくても住民はいるし、旅行者にとっても、ウェブ上で見れる地図情報が充実していたら便利ですよね。

ですから、マッパーが人口の少ない地域の地図を書きこむことは、その地域への貢献にもなるのだそうです。ぜひ、時間があったら、北海道の人口の少ない町村や離島の地図を書いてみてね、とおすすめされました。

ちなみに、OSMの編集画面では、OSM用にトレースしてもよいライセンスが付与された衛星写真が表示されるので、その場に行かなくても衛星写真上に建物や道路をトレースすることができます。正確に書けるか不安になるかもしれないけど、そこは細かく気にしなくても良いそう。なぜなら、間違っていたら他の誰かが直してくれるから。まさに、「みんなでつくる」地図なのですね。

古川さんからは、参加者へ向けてのお土産もいただきました。基本的な操作方法から、便利なサービス、アイディアが詰まったグーグルドキュメント。見ていると、こんなことができるんだ、あれも使ってみたいと好奇心が広がりました。

いいねいいね

地図を書いてみて

自分が書いた地図が、世界中に共有されました。いつか誰かが地図を更新することもあるでしょうけど、しばらくの間は私の書いた小学校の建物が、ウェブを通して世界に発信されます。ごく小さなことだけど、自分が世界にインパクトを与えたような、与えていないような、不思議な感覚。例えば、おすすめのお店を地図に書きこんだら、OSMを見て、海外の人が訪ねに来てくれるかもしれない。こんなに素敵なお店がたくさんあるなんていい地域だねと、人気がでるかもしれない。やらなかったらゼロだった可能性が、微小に生まれたのです。これはクチコミサイトへの投稿者さんにも通じる達成感かもしれません。

そういえば先月、子どもの小学校に行ったら、廊下に学区内探検をまとめた紙が張り出されていました。学期末にはゴミとして捨てられてしまうかもしれない成果物も、残し方次第では地域の大切な資産になるかもしれないですね。

自分が調べた労力を、みんなに共有する。そうすれば次の人は、同じ労力をかけずに、その先の活動に取り組むことができる。この知のバトンを繋いでいけば、一人ではたどり着けないと思っていた目標に、いつかだれかが到達することができるかもしれない。そんな遠くの未来まで考えが広がっていきます。

ワークショップを終えて

この2日間のワークショップで感じたのは、ウィキペディアやOSMが、その編集作業を通じて、現実世界への関わり方を示し、そして自分の中から世界への関心を強く引き出してくれたということです。

編集した記事の対象物や建物に詳しくなり、愛着を持つことができました。

もっと自分の地域を知って、情報を発信したいという気持ちや、素晴らしい遺産を残してくれた地域の先人への敬意や感謝の念が高まりました。

多くの文献の中から中立的な情報をまとめる調べものの基礎も学びました。

そして、一つの情報の影には労力を払って情報を作成した著作者がいて、その人の意志を尊重することが大事だということも学びました。

そして、情報の著作者に敬意を払いつつも、広く情報を開示・共有するオープンデータという仕組みに、世界をよりよく変える巨大な可能性が秘められていることを感じることができました。

さて、その先の未来を見るために、まずは始めてみたいと思います。

だれもが自由に書きこめる百科事典と地図をカキカキするところから。

 

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